立山カルデラのお泊まり会(その1)


北アルプスの一大観光スポット「立山黒部アルペンルート」。多くの観光客が高原バスで通り抜ける弥陀が原のとなりに100年もの永きに渡って砂防工事が繰り広げられている場所がある。それが「立山カルデラ」である−
と仰々しく書き出してみましたが、10月15/16日と、立山カルデラ砂防博物館友の会主催、「野外ゾーン宿泊体験会」に参加してきました。立山カルデラといわれてもピンとこない方が大多数だと思いますが、前述の通り現在も工事が行われており、工事関係者以外立ち入り禁止となってます。ですから、普通の人は普段立入ることが出来ず、見学するための唯一の手段が博物館主催の見学会なのです。ただし、見学会は原則として平日開催で悪天候時には危険なため中止というなかなかハードルの高い見学場所でして、それが今回週末開催でしかも泊まりがけ。これは申し込むしか無い!ということで募集定員10名ということで落ちて当たり前の気分でいたのですが、なんとか滑り込むことができたのでその模様をお伝えします。

2週間ほどまえに届いたしおりをかばんにつめて8時の上越新幹線に乗り、越後湯沢で特急はくたか号に乗り換え、お昼前には富山駅にたどり着く。いままで、夜行電車でしか富山に行った事無いのでこんなに早く付いてしまうとなんか拍子抜けである。富山市内はぐずついた天気で雨も降っている。カルデラのなかは真っ白けかなぁと不安になるが、まあ中止にならなかっただけよしとしよう。集合場所の駅前ロータリーをうろうろしていたら声をかけられマイクロバスに乗り込む。一番最後でちょっと気まずい。あと(ちょっと予想はしていたが)参加者の年齢層は若干高めなのもちょっと気まずい。

現在立山カルデラに入るためのルートは2つある。一つは常願寺川にそって敷設されているトロッコ電車によるルート。もう一つが常願寺川左岸にある桑崎山をぐるっと大回りする有峰林道をつかって自動車で入る今回のルートである。有峰林道は林道とはいえ舗装されており通行料金までとっていたりする結構整備された道路だ。しかし、道は細く横をみれば断崖絶壁、景色はいいが結構怖い道路である(見学会数日前に転落事故が起きて2人の方が亡くなっている)。

S字型の堰堤の有峰ダムを横目に、いよいよ普通の人は立入る事ができない有峰林道の真川線に入る。名前のとおり常願寺川の本流の真川沿いを通る道路である。時期的に紅葉で色とりどりに染まる山々を期待していたのだが、どうも今年は遅れ気味と言う事でちょっと残念だった。でも、所々色づいている木々がみえて気がつくと秋なんだなぁと思う。もう今年も3ヶ月切ってるぞ。うわ、なんか焦ってきた。

いよいよ工事関係者しか立入る事ができないエリアに入る(真川線は環境保護のために立ち入りを規制してるそうだ)工事現場なので中に入る人はヘルメットをかぶらないといけないのだ。事前に配られた砂防博物館のロゴ入りヘルメットを着用する。ちなみに両ゲートとも有人で管理されている(しかも工事区間のゲートは監視カメラつきだとか)。しらばっくれて入ろうとしてもまず無理である。

ゲートを抜けてトンネルをくぐると白岩砂防ダムの上流に出る。当初の予定だと白岩下流展望台から白岩砂防ダムや水谷平を眺める予定だったそうなのだが、ガスがかかって見えないとの事で明日に延期になった。
写真の中央に見える赤茶けた山が鳶泥と呼ばれる大鳶小鳶が崩壊した土砂の堆積物である。1858年にこの地方に安政の大地震が発生し大鳶と小鳶とよばれる2つの山が崩れカルデラの中に大量の堆積物を発生させた。その量は4億立方メートルといわれているそうで、これは黒部ダムや有峰ダムの総貯水量の2倍に当たる量。この堆積土砂は(丁度中越地震山古志村のように)川を塞き止めやがて崩壊し、土石流として下流の(現)富山市内などに大災害をもたらした。現在も2億立方メートルがカルデラ内に堆積しているとされ、それを食い止めるために現在も工事が続けられているということである。

ここから、宿泊場所の水谷平までは歩いて移動する。白岩砂防ダム右岸にある花崗岩の岩肌をくりぬいた白岩隧道を通り抜けるのだが、このトンネルひたすら狭い。もともとトロッコを通すためのトンネルだったそうなのでそのサイズにあわせてつくったのだろうが、普通車がやっと一台通り抜けられる程度のサイズしかない。なので自動車用の信号機がついているのはもちろん、

こんな風に、人が通る場合は歩行者用信号機のスイッチを入れて車が入って来れないようにする。
ちなみに、先ほどの写真で白岩隧道の左手にあった立派なトンネルは、この花崗岩が崩れないようにアンカーを打って固定する工事を行うために作られたトンネルで、新幹線が通れるほどの大きさらしいのだが、途中で行き止りである。

さて、トンネルをぬけると宿泊地の水谷平にたどり着く。ここが現在のトロッコ列車の終着駅であり、立山カルデラ内で働く人が寝泊まりをする場所でもある。鉄筋コンクリート製の立派な建物からプレハブの建物までいろいろある。工事が行われるのは夏の間だけなので用が済めばプレハブの宿舎は解体されて下へとおろされるそうだ。

宿舎の建ち並ぶ道沿いにコカコーラの赤い自販機が立っていた。値段は下界と同じでした。あと携帯の基地局があるという事で通じるかなと見てみたら、

auはだめでした。立山カルデラでも通じるのはドコモだけ。

そんなわけで、今回お世話になったのがこの「水谷生コンクリート事業共同組合宿舎」です。工事現場の宿舎ということでいったいどんなところか想像できず、だだっ広いところに雑魚寝みたいな事まで覚悟していたのですが、そんな事は無くて2人部屋にきちんとベッド2つ用意されているようなきれいな部屋でした。
このあと、見学者の皆さんと博物館の方や解説員の方が集まって懇親会がありまして、富山のあれこれ聞かせていただきました。日本酒もおいしかったー(帰りに買ってかえろうとしたけど、銘柄をすっかり忘れて買えませんでした)。<立山カルデラのお泊まり会(その2) - 「まずまずのダム日和」に続く>