「八つ橋を作る」

まえがき

京都のお土産といえばまず八つ橋である。これから修学旅行の時期、なんだかんだで口にする事が多くなるのではないだろうか。ところがこの八つ橋、調べて頂けば分かると思うが、Web上では各メーカーの公式サイトや通信販売のページの他にはまとまった情報がほとんど存在しないのだ。ピンポイントを付くマニアックなサイトであふれている昨今のWebシーンにあってこの状況にはちょっと驚くばかりである。お土産屋さんで買ってきて食べ比べて文章にすればそれですみそうなのになぜだれも手を付けていないのだろう。
…なんてここ数日、八つ橋の事を考えていたら無性に食べたくなってしまい、買いに行くのも大変だしなぁということで、Web上に掲載されていた八つ橋のレシピをもとに自分で作ってみる事にした。

どうせなら

市販されている八つ橋のように、あんこ以外に変わり種の八つ橋を作ってみる事にした。といっても、なにがあうか良く分からない。市販品のラインナップをそのまままねても芸がないし。考えた末、八つ橋の生地にまぶされる『八つ橋八つ橋然としているスパイスであるシナモン』が使われている料理を応用しようということにして、次の種をなかに入れてみることにする。

  1. 粒あん(スタンダードに)
  2. コーヒー(カフェラテにシナモン振りかけるとおいしいから)
  3. リンゴの砂糖煮(アップルパイにはシナモン振ってあるはず)
  4. アイスクリーム(シナモンかけてある事あるし、お土産やさんの店先には並べられない一品)

種の下準備

粒あんとアイスクリームは出来合いのものを買ってくれば済みそうだが、コーヒーとリンゴの砂糖煮は一手間かけないと駄目そうだ。というわけでまずこの具材に取りかかる。

美味しんぼに「アップルパイのリンゴは紅玉」みたいな事が書いてあった記憶があるので、山岡さんに従って紅玉を二つ用意。これを8つにきってから薄切りにする。

なんか、20代後半の男が休日にやる作業として、これはどうなのだろうかという疑問がふと頭をよぎるがなんとかすべてを切り終える。

あとは鍋にバターをとかしてリンゴをいためて仕上げに砂糖を投入するだけだ。別に楽しくないわけじゃないのだが、果たしてこんなことしてて良いのだろうかと、なにか引っかかるものを感じつつ鍋をかき混ぜる。

出来上がって粗熱をとって皿に移す。味見したらなかなかうまくて感激する。このままパイにしたらおいしいだろうなぁ。トーストにはさんでもおいしいかもなぁ。でも使うのは結果未知数の八つ橋の具。リンゴにすまない気持ちになる。

コーヒーを八つ橋に入れるためにどうしようと考えた末、コーヒーゼリーにして挟み込もうということに決めた。生地に練り込むというのもありかと思ったが、そうすると中に入れるものが必要になる。コーヒーは春先ようやく近所にできたスタバでスターバックスラテを買ってきた。サイズはグランデ、ゼラチンを投入する量を計算するため計量してみたら450mlあった。一つ賢くなった。

冷蔵庫で冷やして3時間。すっかり固まる。これも味見してみたのだが、なんというか淡い味。これで大丈夫なのだろうかとちょっと不安になる。

いよいよ生地に

Web上で検索するといくつかレシピが掲載されているのだが、まとめてみると

  1. 白玉粉(餅米の粉)」と「上新粉(うるち米の粉)」をブレンドする
  2. その粉と同量くらいの砂糖を混ぜる
  3. 水で練って蒸す
  4. 蒸し上がった生地を練ってシナモンをまぶしつつ麺棒でのばす。

という流れである。いろいろあったのは粉のブレンドの割合だろうか。いろいろ見ていたら「値段を下げるために上新粉を混ぜる」みたいなことが書かれているページがあったので(たしかに白玉粉の値段は上新粉の1.5倍くらいする)、全部白玉粉で作ってみる事にした。自作のこだわりである。

白玉粉を大さじ4杯、水も同量、砂糖も同量混ぜる。加熱は電子レンジでもできるそうなので、どんぶりに入れてラップをかけて2分弱加熱する。

加熱がおわってスプーンで取り出す。このまま練ろうとするのだが、くっついてしまってうまく練る事ができない。つきたて餅の様相を呈している。で、シナモンかければどうにかなるかと思ったが

だめでした。なんか放送禁止気味の写真ですいません。味は八つ橋でした。

なにが間違ったのか良く分からないので、とりあえず、ネットのレシピ通りにつくって見る事にする。
白玉粉1に上新粉3の割合でブレンド、砂糖と水を同量加えて混ぜてから加熱。加熱が終わって祈るような気持ちでスプーンを突っ込んでみると、今度はちゃんとまとまりそうな雰囲気である。取り出してみたら十分扱えそうなちょうどいい堅さ。なんだ、コストカットだけじゃないじゃん。

シナモンまぶしながら麺棒でのばして四角く切る。四角く見えないかもしれないがそれはあまり生地の有効活用ということで。出来合いの粒あんをちょこんとのせて角を折れば・・・。

おー、まさしく八つ橋である。色黒で不格好だが気にしない。問題は味だ。一口食べてみると・・・、八つ橋だ!すげー。ちょっとざらつく感じがあるのはシナモンの入れ過ぎか練り込みがたらなかったのか。ともかく、あのお土産の味がこの手で再現できるなんて。何とも言えず不思議な気分。

変わり種も

生地の作り方がわかったので、さっきの3倍量で生地を作る(砂糖だけは2/3にした。なんかこんな大量な砂糖を食べていいのかという気になってきたので)。まずは出来がよかったリンゴからである。生地をこねて真ん中において半分に折る。

リンゴだけを食べたときはおいしかったので、期待をこめて口にはこんだのだが、未だかつて味わった事の無いような不思議な味が口の中に広がった。びっくりするほどまずいというわけでは無いのだが、生地の粉っぽさとリンゴの甘酸っぱさがきっぱり分離していてまったく混ざり合わないのだ。いきなりつまずく。

期待のリンゴがこういう結果になって、いまいちなこのコーヒーゼリーに期待が持てるであろうか。がっくりしながら生地をのばし、ゼリーをのっけて包む。ちょっと覚悟を決めて一口、「・・・うまい!」。ゼリー単体のときはぼーっとした味だったのが、八つ橋に包んでみた途端異様にコーヒー感が出てきたのだ。やればできる子だったんだね。環境は大事だ。

予想外の大逆転劇に気を良くし、いよいよ真打ち、アイスである。これはまずくなるわけないと思っていた。コーンでもパンでもあうから穀類とは仲がよさそうだから。生地をこねてアイスを取り分けるが、冷蔵庫に入れておいたら異様に固くなってしまい、スプーンで掬うのに手間取る。食べてみると、まあおいしかったのだが、食べていてふと気づいた。これ、雪見だいふくだ。調べてみたらやっぱり白玉粉をこねた「ぎゅうひ」にアイスを包んだものらしい。京都のお土産屋さんにいかなくてもコンビニで買えるわけだな。あらら。

まとめ

「お店で買うもの」を自分で作り出せるというのは結構楽しい。今後八つ橋が無性に食べたくなったとしても自分で作れるという事がわかったのは儲け物だ。ちなみに、今調べてみたらコーヒー八つ橋は存在するらしい。リンゴはないだろうと思ったらこれも製品化されているようだ。いったいどんな味がするのか気になるところだ。と、書いていてふと気づいたが、シナモン大量にまぶさなければリンゴもそこそこいけたのではという気がしてきた。ごめんよ、リンゴ。
残りは、パンにのせておいしくいただきます。