「世界に一つだけの花」の構造

ずーっと前から何かのついでに書こうと思っていたが、書く機会がなかったまま来てしまって、今日ふと思い出したので書く。物凄くいまさらな話と最初にお断りしておく。
荒俣宏の少女漫画に関する著作中で「乙女チック」とは「過激なまでの自己肯定である」と説いていた。いまいちぱっとしないヒロインがひそかに心寄せる憧れの男性になんとか近づこうと、眼鏡を止めてみたりファッションを気遣ってみたり努力をするのだが、最終的には男性の「素顔のままの君が好き」「眼鏡のままの君が好き」というところに落ち着いてめでたしめでたしとなるあれである。
この構造をそのまま現実の世界に持ってきたのが「世界に一つだけの花」なんじゃないだろうか。「国民的アイドル」であるSMAPが「そのままの君が1番だ」って言っているのだ。この構造があってこそのこの曲の説得力なのだ(このCDのジャケットにはSMAPが出演したCMの企業ロゴがあしらわれていた。この構造を裏付ける為のSMAPの圧倒的な力を表現した物と言えるだろう)。
だから、この曲は自分で歌っちゃいけない歌なのだ。歌ったところでただの言い訳にしかならない。途中から反戦歌みたいに祭り上げられて、妙な雰囲気が漂っていたのもそのせいで、SMAPがこの構造で支えるにはこのテーマはあまりに重過ぎる。誰ならいけるかな。