分杭峠の話

これ読んでちょっと思い出したので備忘録的に。

“パワースポット”なんか知らない - 一本足の蛸
個々の事例紹介をみると、たとえば龍泉洞内の地底湖に安らぎと感動のように、あえて「パワースポット」という語を回避したような文章もあれば、分杭峠の“ゼロ磁場”にリピーターのように「一線を引いた対応」を強調した文章もあり、必ずしも“パワースポット”万々歳というわけではないのだが、この特集記事の基調はかなり危ういように感じられる。読んでいて気分が悪くなった。

「分杭峠」の「一線を引いた対応」っていうのはすんなり出来たものではなくて、どうにかここに落ち着いた結果なんじゃないかなという気がします。
というのも、これを見てほしいのですが

伊那市:分杭峠(気場)
☆☆ ゼロ磁場(気場とは?) ☆☆
【断層断面図ゼロ零磁場(断層)の機能】
 分杭峠は中央構造線という大断層の上にあります。断層には地表面のズレとしての段差並びにゼロ零磁場があり、人間に例えると皮膚の経絡(けいらく)・経穴(つぼ)と同様に気の通る道並びに気の出口・入口であると考えることが出来ます。

 断層の両側から押し合う力によって、断層には全般的にエネルギーの蓄積があり、また局部の突出部にはエネルギーのないゼロに近い場所(零場)もあり得ると推定出来ます。零は文字どおり「なにも無い、零」でありますが、(+)回転と(-)回転が一対になった素粒子状のスピン対(気)は零にならず、逆に零場に次第に蓄積される傾向があると判断できます。

 断層付近には、放射線の強い場所や地磁気変化の著しい場所があります。実験によると、サイ(気)はラジウム放射性物質原子の原子核内の不安定な中性子に直接働きかけて、y線などのエネルギーを放出して、より安定的なラドン等になる(ラジウム崩壊)性質があります。

 気は不安定な物質を安定化してバランスを取る性質があり、この崩壊の際のエネルギーを使って異常現象を起こしていると考えられています。ラドン温泉などとして知られる低線量放射線は、免疫の機能を高め、自然治癒力を増進させるもので、健康に良いと言われています。

これ、オカルトサイトじゃなくて、すこし前まで(少なくとも2010年くらいまでは)伊那市の公式ページに記載されてた文章なんです。すごいでしょー。
以下伝聞混じってたりするので不正確なこととかあるかもしれないと断りを入れた上での話ですが、分杭峠の「ゼロ磁場」がいわれだしたのは平成7年ごろ。それに当時伊那市に合併する前だった分杭峠の地元の旧長谷村が乗っかったらしくてなんかいろいろやり始めたとか。そのてこ入れの甲斐があってかなかったかよくわかりませんけど、ここ数年で大ブレイク、不便な山奥の細い峠道が大渋滞になるような状態に。
で、そのブームのさなかに伊那市のサイトに掲載されていた解説文が上記の通りで、さすがにそれにはいろんなクレームが入ったようで、現在では下記のようなある程度落ち着いた文章になっています。

http://www.city.ina.nagano.jp/view.rbz?nd=95&of=1&ik=1&pnp=38&pnp=76&pnp=95&cd=157

特に、このあたり一帯は「南アルプス(中央構造線エリア)ジオパーク」に指定されていて、分杭峠周辺にも中央構造線の路頭などのジオサイトがあったりするのですが、その一方で先ほどのような地学の学術用語をつかった大分アレな文章が掲載されていたりするので、当時「うわー」って思った記憶があります。
分杭峠の「ゼロ磁場」について、分杭峠のもう片側にある大鹿村(映画「大鹿村騒動記」の舞台になったとこですね)の「大鹿村中央構造線博物館」のサイトに、当時、ゼロ磁場についての学芸員さん綴った良い文章が当時掲載されていたのですが、今見てみたら見つけられなくて残念。
というわけで、そういう物とどのように折り合いをつけてきてどのような落としどころにもっていったのかという蓄積が伊那市にはおそらくあるんじゃないのかなぁと思うのですが、先の雑誌でそこはあんまり語られてないですね。