行政機関のWebサイトと著作権 その2

行政機関のWebサイトと著作権 - 「まずまずのダム日和」の記事にコメントやらブクマいただいて、自分でも妙に気になってきたのでもうちょっと調べてみる。
前回国土交通省を例に挙げてみたけど、ほかの省庁はどうなってるだろうか、グワッと調べたものを別エントリに掲載してみた
ざっと見てみると

  1. サイトのコンテンツが著作権法等による法的な保護の対象になっていること
  2. 引用・転載等に関する注意事項
  3. 改変の禁止

という3つの要素が盛り込まれている感じである。
で、この二つ目、引用・転載等に関する注意事項については、農林水産省のような「無断で引用、転載、複製を行うことはできません」という否定的なタイプと総務省のような「適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載複製を行うことが出来ます」という肯定的なタイプが有って、本来同じ条件で提供されるべきだろう部分なのに省庁間で差がある。
まあ、そもそもこういう文章は「高木浩光@自宅の日記 - 会社のポリシーは会議室で決めてない、現場でコピペしてるんだ, 追記(24日)」みたいな事で作られていてそれほどきちんと考えられたものじゃないっていうみたいな身もふたもない話かもしれないけど(引用と転載がごっちゃになってるあたりとかかなり隙がある文章に思える)、統一されていないのは気持ち悪い。
で、調べていくうちにそもそもブログとかに掲載するのは転載じゃないよ、という話にぶち当たった。

Wikipedia:井戸端/subj/行政の広報資料等の転載 - Wikipedia
◆運用規定はありません。根拠は条文そのものです。32条2項は「刊行物に転載することができる」と書かれているだけで、「公衆送信を行うことができる」とは書かれていないのです。Wikipediaのコンテンツは公衆送信されています。

もう根本から覆されるような話なのだが、上記の記事でも触れられている通り、2000年に著作権審議会第1小委員会においてそのものズバリな討議が行われている。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/chosaku/gijiroku/012/001010.htm
○ インターネットが普及しているので、国等の著作物を自由にインターネットに載せることについても併せて検討すべきでないか。
△ 国等の著作物については、第32条第2項により、紙媒体であろうが電子媒体であろうがそれを刊行物に転載することができる。ただ「転載」に公衆送信を含めて考えるには無理があるので、もしインターネットへ載せることも含めるのであれば、条文修正が必要となる。
○ インターネット上に引用する場合は問題ないとすると、「転載」と「引用」の違いは何か。
△ 「引用」は主従関係による分量の制限があるのに対し、「転載」は説明の材料という目的上の制限がある以外は自由に行えるという点で異なる。
(○:委員、△:事務局の発言)

ネット上にアップするのは「公衆送信」に当たって現状では条文の改正が必要ということなのだ。だめじゃん。
でもそういうことだったら各サイトの著作権に関する説明に「インターネット上の他のサイトに掲載するのは公衆送信に当たるため許可なく行う事はできません」みたいな事を明記する必要が有るんじゃないか?ネット上のコンテンツって紙に転載される可能性よりネット上でコピーされる可能性の方が明らかにあるでしょ。
ついでに、各省庁が公表する白書の文章や図版等といったネット以外の場所では頻繁に転載されて活用されているであろう著作物に関しても、ネット上に掲載する事は問題があるということになる。これはかなり問題では。
とはいえ、この議論がされたのは2000年、多分「便所の落書き」発言が有った頃だ。公益社団法人著作権情報センター CRICというところが掲載しているコンテンツにこんなのがある。

http://www.cric.or.jp/qa/multimedia/multi13_qa.html
しかし、国・地方公共団体独立行政法人等の広報資料、調査統計資料、報告書はその内容を国民一般に広く知らせることを目的として作成されたものですから、ホームページに転載して利用されることは、むしろ作成の目的に合致するものと解されます。このようにみていきますと、これらの転載には許諾を必要としないと考えてよいと思われます。

思われます、という書き方が若干心もとないのだが、おそらくそういう感じなのだろう。そう考えて各省庁の著作権に関する注意書きを見ると、そのあたりの事情でモニョってるようにも見えなくはないし、まあそういう事なんだろう。
でも、まあ、もうちょっとキチンとしても良いのではないかという気もしなくもないなぁとは思う。アメリカみたいに「行政の作った著作物はパブリックドメイン」くらいなれば良いんだけど。