「まるいち的風景」を読め!

いよいよ文庫版「まるいち的風景」が発売となります。単行本未収録の話などを含む完全版です。

まるいち的風景 第1巻 (白泉社文庫 や 7-5)

まるいち的風景 第1巻 (白泉社文庫 や 7-5)

まるいち的風景 (第2巻) (白泉社文庫 (や-7-6))

まるいち的風景 (第2巻) (白泉社文庫 (や-7-6))

「まるいち」は電機メーカーKAMATAが開発した「行動トレース型ロボット」。「まるいち」にやらせたいことを目の前で実際にやって見せることでその動作が登録されて、声で命令すると「まるいち」がその行動を忠実に再現してくれるという代物です。ExcelやWordなんかにある「マクロの記憶」機能の現実版とでも表現したら良いでしょうか。逆に、登録してないことをいくら命令しても動いてくれませんし、登録した通りにしか動かないので、のんびり屋の人が登録したらのんびり屋の「まるいち」が出来上がると。そんな「まるいち」が有ることによって起き上がるドタバタをほのぼのタッチで描き出したのが、この「まるいち的風景」なのです。
で、この「まるいち的風景」の何が良いかといいますと、「ヒトとモノとの幸せな関係」が見事に描かれている所なんですね。前述の通り、まるいちは高性能なロボット。それが日常社会に入ってくるんですから、いろいろ批判は出てきますし、それを悪用した事件は起きると。でも、その問題に対して真正面から実直に登場人物が向かい合って落としどころを見つけていくんですね。その展開がまあ、ご都合主義的では有るんですが(この作者の話は割とそんな感じの話が多くて、おそらく意識的にやっているんじゃないかという気もしますけど)、現実世界で起きてる問題(例えばネットを取り巻く数々の問題とか)もこんな風にうまくいかないだろうか、なんてオーバーラップして考えさせられてしまいます。
このテーマの選び方、オンタイムで読んでいた時に当時現実で起きてる問題(何だったのか忘れちゃいましたが)とリンクしているような感じを受けたように記憶しているのですが、今回この記事書くので改めて読み返してみてみると、改めて今現実で起きてる問題とくっつけられてしまう事にちょっとした驚きを感じました。「ヒトとモノの関係」っていうのは、根深くて答えの出ないものなのかなぁ、なんていう気がします。
で、まあ、なにを置いても、ユーザによっていろんな格好してテケテケ歩いている「まるいち」はかわいいですし、開発者の美月さんの理系思考というか自己完結っぷりはなかなか強力。やられてしまう人は絶対居るはず。男性でも手に取りやすい漫画文庫の棚に並んでますし、今はAmazonだってあります!今から10年以上前、AIBOもまだ生まれていない時期にこんな漫画が少女漫画雑誌に掲載されていたという部分だけでも結構見所としてあるんじゃないかと思います。つたない文章で面白さがうまく伝えられないのですが(id:dankogaiさんに書評していただきたいなー。献本できないけど)ともかく、私の一押しコミックということで是非。