「春の小川」にコイキングが泳ぐ?! - 渋谷のコイキングを調査してみた その2

「春の小川」にコイキングが泳ぐ?! - 渋谷のコイキングを調査してみた その1からの続きです。

9月13日に追記しました

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渋谷の街の中を歩き回ってみたところ、確かにかつての川の跡の上でコイキングがビチビチ跳ね回っている様子を実際に目の当たりにすることができた。しかし「コイキングは水辺に出現する」ということが正しいのなら、かつては川だったとはいえ、なぜ現在の渋谷の街に現れたのだろうか。

まず最初に思いつくのは、わざと出現させたという身も蓋もない話である。確かに渋谷の街の地下には川が流れているという話はかなり有名なのでそれにちなんでこっそり仕込んでおいたなんていうことはありそうな話ではある。しかし、そういう理由でコイキングをだそうとすれば「春の小川」の歌碑が建立されている河骨川沿いにまず出現させようとするんじゃないだろうか。ところが実際に行ってみると鉄道の線路沿いというのを差し引いても歌碑周辺はコイキングが出現する様子ではなかった。

では一体何がコイキングを渋谷に呼び寄せているのだろう。ひょっとしてリアルな渋谷の街中に川を見ることはできないけど、例えば地図には何かしら記載されていてそれがコイキングを出現したりしているのではないだろうか。
というわけで、国土地理院の提供する地理院地図の電子国土基本図で渋谷周辺を見てみる。

地理院地図 渋谷駅周辺

ご覧の通り、渋谷川の開渠部分のみが地図上に記載されており、暗渠部分は全く記載されていない。
ではGoogleマップならどうだろうか。

Googleマップ 渋谷駅周辺

やはり同様に稲荷橋より下流の開渠部分のみが川として表されていて、暗渠部分は地図上に一切記載がない。っていうか、そもそもポケモンGOのアプリのプレイマップ上の表記がこうなっていた。ということで、地図表記上に原因を求めるのも脈がなさそうである。

では、ポケモンGOはなにをもって渋谷の川を判断しているのだろうか。考えてみた結果がこれである。
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これはJAXAによって無料公開されている「ALOS全球数値地表モデル (DSM) "ALOS World 3D - 30m"」というデータを使用して作成した渋谷周辺の標高を表した地図である。白黒の濃淡が標高を表していて色が白くなるほど標高が高いことを示している。

そして、ポケモンGOはこの地形データから自前で川を算出することによりコイキングコダックの生息域を設定してるように思えるのである。

もっと詳しく見ていこう。
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先ほどの地図にOpenStreetMapのデータや地名を記入したものである。渋谷の街に刻まれた谷状の地形にそって道路などが走っている様子が見て取れる。

さて、GISツールと呼ばれる地理情報を扱うためのソフトウェアを利用すると、こういった地形のでこぼこのデータをもとに流域や川筋を算出するなんていうことができたりする。

Q:簡単に流域界データをつくりたい | giscience.jp

の記事を参考にしてデータを作成してみた結果を合成してみるとこんな感じになる。白い線が算出された河川の流路、オレンジ色の線が雨が降った時にそこに流れ込む場所である流域の境界を表している。
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注目したいのが駅周辺の様子。この「ALOS World 3D - 30m」というデータは「数値表層モデル(DSM)」と呼ばれるデータで、建物や樹木など地表の事物も含めた標高が記録されている。(参考測量に関するミニ知識|国土地理院)そのため、渋谷駅周辺の高いビルがそのまま標高として地図上に現れてしまい、算出された川が駅周辺を蛇行するように流れているようになってしまっている。現地でコイキング探しをしてみると駅周辺だけなぜかコイキングが現れなかったが、それがこのデータを利用してる証左にならないだろうか。

では、なぜポケモンGOはわざわざこんなことをしているのだろうか。それはポケモンGOのサービス対象エリアが特定のある一国を対象にしているわけではないからじゃないだろうか。

日本の場合、国土地理院によって全国をカバーする地形図が作られていて、さらにそれの電子化も強力に推し進められている。また国土数値情報のような各種の電子化されたデータが無料で公開されていたり、おそらくお金を出せばもっといろいろなデータを手にすることもできるだろう。

しかし、リオオリンピックに合わせてブラジルでポケモンGOのサービスが開始されたことがニュースで伝えられたように、おそらくポケモンGOは最終的に全世界をサービスエリアとしてカバーできるようにすることが求められ、また目指していると思われるのである。

ところが地図の整備状況やその電子化の状況というのは地域によって相当に差がある。日本のように電子化された地理情報が整備されて容易に手に入れられるような地域は世界の中ではかなり稀な状況といえるだろう。

その様子は実際にGoogle Mapsでうかがい知ることが出来る。試しに日本とブラジルで同一レベルの地図を表示してみよう。

Googleマップ 日本の地図

リンク先の日本の地図では支流の小さな河川まで表記されているのに対して

Googleマップ ブラジルの地図

ブラジルでは衛星画像でみると明らかに河川のようなところも地図には川として表示されなかったりする。

このような状況下において全世界で同じようにゲームを行えるようにするためには全世界同じようなレベルで提供されているデータを利用するしかない。幸い、先ほど使用した「ALOS World 3D」などの標高データはほぼ全世界をカバーするような規模で提供されていて、これを利用して自分で川筋を計算すれば、全世界の中小河川までカバーできる河川の地図を得ることができるだろう。コイキングコダックといった水辺のポケモンの生息域を表現することも可能になる。ただ、この方法では渋谷のように川底が暗渠化されたなんていう情報は得ることができない。そのため、今は消えてしまった川筋にコイキングが跳ねまわるなんていう椿事が起こったんじゃないだろうか。

ところでポケモンGOのゲーム中の位置情報の取り扱いを注意深く見てみたとき気づいたことがもう一つある。それは「ポケモンの巣」の設定方法である。

ポケモンGOのゲーム中でレアなポケモンはある特定の場所のみに出現するようになっているようで、そういった場所が「ポケモンの巣」と呼ばれていたりしているようなのだが、どうやらそれらは必ず公園の中になるように上手に設定されているようなのだ。ポケモンGOのサービス開始以来、世界各地のゲームに興じるポケモンプレイヤーの熱狂ぶりを伝えるニュースを幾度ともなく見聞きしたと思うけど、人が集中して大変なことになっている場所はキチンと公園になっているようなのである。つまり、ポケモンGOゲームエンジンポケモンGOが安全に遊べる広場のような場所をきちんと把握できている可能性が高いのだ。

これは、日本国内だけで実現するのならそういうデータはどこかにありそうである。しかし、全世界で同じようにやろうとしたらどうだろう。かなり難易度の高い作業なのではないか。しかし、事実としてそれを実現してしまっているようである。一体どのように実現しているのだろうか。

一つ考えられるのはIngressのゲームデータの活用できるる。ポケモンGOのポケストップはIngressのポータルのデータが流用されているという話は有名である。だが実際はもっと深い部分でIngressのプレイ情報がポケモンGOに活用されていたりするように思えるのだ。「ポケモンの巣」の設定も、Ingressのポータルの密度や移動速度が一定速度以下のエージェント(Ingressのプレイヤー)しかいないまとまった領域みたいな基準で算出するなんてくらいのことはしているんじゃないだろうか。

ポケモンGOといえばポケモンという強力なIPとAR要素がまず注目されがちだけど、位置ゲーを全世界で同一ルールで提供できる技術や体制というのは一見地味だけどかなりのものにみえるのだ。これは本当にちょっとやそっとじゃ真似できない気がする。

まあ、なにはともあれ、「かつて文部省唱歌として歌われ高度経済成長によって失われた川が、グローバル企業のグローバル戦略によってうっかりその姿を現してしまった」としたら、なにか虚をつかれたような驚きと不思議さがあってすごく面白いなぁと思う。また、こんな風に地形が思いもよらない形で表現されている可能性を見るに、地図や地形の表現というのはまだまだ色んな可能性があるなーなんてしみじみ思うのだ。

追記(2016年9月13日)

と、なんとかブログにまとめてホッとしていたのですが、衝撃的な情報が飛び込んできました。

結論からいうと、「ポケモンGOOSMに掲載されていた旧渋谷川水系に由来する暗渠の情報に基づいてコイキングを表示していた」ということのようなのです。

具体的にはまず「ポケモンGOポケモンの生息域を作り出すのにオープンストリートマップ(OSM)の情報を利用している」らしいということです。
詳しくは
pokesoku.co
をお読みいただけばと思いますが、OSMの地物の属性情報を基にして出現するポケモンの確率が設定されていたみたいなのです。

さらに、「OSMには渋谷の旧河川の暗渠の情報が登録されていた」というもう一つの要因が渋谷の街の中にコイキングを発生させたといえるでしょう。

国土地理院の地形図をはじめ一般の地図には旧渋谷川の暗渠は描かれていませんが、OSMの場合誰もが自由に地図を編集できるため、誰かが登録すればそれはOSMのデータとして登録されることになります。

OSMについて不勉強なためきちんと正確なところは説明できないのですが、

宇田川遊歩道から代々木八幡あたりのオープンストリートマップ

をごらんになると分かる通り、OSM上に旧渋谷川水系に由来を持つ暗渠が川として登録されているようで、そのためにポケモンGOゲームエンジンは川に現れるポケモンを出現させたということになるようです。また、地図はGoogleマップを利用して表示していると思われるので、地図上の川の表示と一致しない、ちぐはぐなことが起こったということになるでしょうか。

また、渋谷以外にも立会川の暗渠でコイキングが出現するっていう話を前に目にしたのですが、こちらも今確認してみると、確かに水路が描かれています。

大井町そばのオープンストリートマップ

というわけで、ほぼ間違いなくこれが正解だと思われます。まさか、こんなはっきりと結論がでるとは思ってもみなかったのでびっくりして拍子抜けしてしまったのですが、まあ、確かにOSMは全世界をカバーする取り扱いが一番容易な情報ではあるでしょう。でも個人的にはもっとなんだかびっくりするような方法でゲームを実現してて欲しかったなぁとかなんとか、って、まあ、個人の勝手な思いですが。

「春の小川」にコイキングが泳ぐ?! - 渋谷のコイキングを調査してみた その1

こんなブログ記事があった。

i.meet-i.com

ポケモンGOにはわりとどこでも見つかる種類のポケモンというのがあって、このコイキングもそのうちの一つである。ところが、このコイキング、どこでも見つかるとはいうものの生息域の分布に偏りがあり、どうも出現するのは現実世界の川や池のそば、あるいは海のそばといった水にかかわる場所に限られているらしい。試しに「コイキング」でツイート検索するとそういう場所で撮られたAR写真が結構ひっかかる。どうやら、ポケモンGOゲームエンジンはリアルな土地の情報を把握していてポケモンの生息域をそれに応じて設定しているようなのだ。

ところが、先ほどのブログの記事によれば川も池も見当たらない渋谷の街中コイキングコダックといった水辺に現れるポケモンが現れているという。たしかにかつての渋谷の街には渋谷川の本流や支流が流れていたものの、戦後暗渠化されたために姿を消してしまったという歴史があるけど(参考:渋谷川って、どんな川だったの?(pdf))、はたしてこれはいったいなんなのだろうか。何はともあれともかく現地に行って様子を見てみなければということで、8月の始め頃に渋谷でコイキングを捕まえてきました。
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まずは今も残る渋谷川に。渋谷川は源流部は暗渠化されているものの、途中まで蓋のされていない川として残っている。渋谷駅を出て明治通りを歩いて行くと右手に渋谷川を渡る路地が現れる。そこを折れて橋の上にいってみると
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コイキングが早速ご登場。ビルの谷間にひっそり流れている三面コンクリート張りの川だけどきちんとコイキングはいるらしい。

逆に、ポケモンGOのマップ上にも渋谷川がしっかり描かれている。
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渋谷川コイキングの生息域だということを確認したところで、渋谷川が暗渠になる場所まで移動する。渋谷駅東口交差点のすぐ近く、稲荷橋から上流が暗渠になっている。
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ここでポケモンGOを確認してみると、コイキングだ!
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ポケモンGO上の地図でもちょうどここで渋谷川が見えなくなっている。
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この先渋谷川の本流は渋谷駅の下を通り明治通りの方へ抜けて最終的には新宿御苑の方まで続いていたそうだけど、現在はすべて暗渠になっていて河川の指定も解除されているらしい。
今回はJR線の下をくぐってスクランブル交差点まで移動してみる。
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面白いことに渋谷川から離れた途端劇的に見つかるポケモンが変わってくる。さっきあれだけ出てきたコイキングが一向に出ないのだ。ハチ公前広場でしばらくポケモンGOの画面を見ていたんだけど、大体こんな感じ。
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ところが交差点を渡って109前あたりまでくるとコイキングがまた現れ始める。
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この辺からセンター街の方に歩いていくとコイキングがそこかしこでビチビチ跳ねていた。
このあたりの宇田川町という地名、その由来は渋谷川の支流である宇田川にある。
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さて、ここから東急ハンズNHK・代々木公園の横に向かってあるいていたらまたいつのまにかコイキングが出なくなった。
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ところが、井の頭通りを横断して代々木八幡駅方面に歩き出したらまたやたらとコイキングが出始めた。
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このコイキング生息域は代々木八幡駅を過ぎて、代々木上原方面に向かってずっと続いている感じだった。
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日を改めてさらに別の日、今度は渋谷駅前から公園通りを歩いてみる。この辺はきんぎょポケモンのトキサントはでるもコイキングは出てこない。
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ところがJRの高架をくぐって明治通りを右に折れてしばらく歩くとコダックが現れ始め、ついにコイキングが!
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前述の通り、ちょうどこの辺りはかつて渋谷川の本流が流れていた場所に当たる。
このあと、駅前に戻ってセンター街を通り抜け、代々木八幡駅方面へ向かって歩いてみた。
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今回は宇田川の暗渠の上に作られた宇田川遊歩道を通ってみたのだけど、その道すがらコイキングコダックでるわでるわ。
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そして今回は代々木八幡駅から右に折れて河骨川の跡を辿ってみる。この河骨川、文部省唱歌「春の小川」のモデルになったという説があり、現在その記念碑が作られているのだ。
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駅から歩いて行くと電柱に「春の小川」の案内看板があった。そういう名前のお店の広告かなにかと思ったけが、どうやら本当に河骨川の案内らしい。
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小田急の線路と民家の隙間を通る細い道がどうやら春の小川のモデルの河骨川跡のようである。
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ただ、ポケモンが一向に出ない。鉄道の線路の横だからなのだろうか。街灯などがさほどあるわけでもなく場所によっては真っ暗な道をてくてく歩いて行くと「春の小川」の記念碑までたどり着く。
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ちなみにこの記念碑、ポケストップにもなっている。
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この辺りコイキング以前にポケモン自体が全然出てこなかった。そして、「かくれているポケモン」を見てもあまり水辺のポケモンっぽさがない。
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そんなこんなで、渋谷周辺を歩き回ってコイキングの生息状況を調べてみた結果を地図にまとめてみるとこんな感じになる。
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まとめてみると

  • 渋谷川の開渠区間は出現
  • 渋谷駅周辺には出現しない
  • センター街-宇田川遊歩道-代々木八幡駅-代々木上原駅のルートは出現する
  • NHK放送センター-代々木公園の方まで行くと出現しない
  • 春の小川の歌碑周辺は出現しない

みたいなところだろうか。
というわけで、一体これはなんなのかを考えてみます。
その2に続く
dambiyori.hatenadiary.jp

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このほかに既刊の

をご用意して待ってますー!
あ、あと、完売したダムマンガ聖地巡礼本1巻の内容は

「私立荒玉女子高校ダム部活動日誌-ダムマンガ聖地巡礼ガイド」サポートサイト

でpdfを無料で配布しています。合わせてどうぞ。

「DamMaps:川と流域地図」正式版を公開しました

昨年の秋口から作り始めた「川と流域地図」ですが、流域を塗らないタイプの地図タイルが準備できたので今回正式版として公開しました。

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DamMaps:川と流域地図 Version 1.0.0
http://tiles.dammaps.jp/ryuiki/

透過タイプに関してはまだ線の表現が微妙な感じするのでまだもう少し手を加えることになると思いますが、一応当初やりたかったことをを全部盛り込めた感じにはなりました。途中同人誌製作で2ヶ月くらい間が空きましたけど、まあ半年でこんなものができあがるなんて本当に思ってもみなかったです。データを公開されてる国土交通省さんとオープンソースの地理情報ツールの開発者の方々に感謝感謝ですよ、本当に。ありがとうございました。
今回のバージョンより

http://tiles.dammaps.jp/ryuiki/1/{z}/{x}/{y}.png

みたいになりまして、URLのバージョン部分の指定がメジャーバージョン番号だけでアクセスできるようになりました。このURLの場合、そのバージョンの最新版が参照されるようになっています。「1.0.0」みたいに指定してもアクセスはできるのですが、過去バージョンについては容量の関係で公開終了する可能性がありますので、その点ご注意ください。あと、データ提供エリア以外のアクセスがあった場合にも透明な画像を返すようになったので、範囲でリミットかけなくてもエラーが発生したりはしないと思います。
透過版が思ったほど見やすくならなくて、ちょっとこれどうしたもんかなーっていう感じになっているのですが、もうちょっとあれこれ頑張ります。
この後の展開としては、国土数値情報の流域データが明らかにおかしいところがあるので、そういうところの修正などを施したものをバージョン2として公開したいなぁと。あと、「ある地点の上流の流域を図示したい」みたいなことができるようになったら良いなーってずっと思っててそのあたりの方法考えたりしたいなーとか考えています。
というわけで、DamMaps:川と流域地図の今後にご期待ください。
そして、どうぞご利用ください!

DamMapsの10年

軽い気持ちで始めたものが10年経ってしまいました。
ネット上では「Web2.0」や「マッシュアップ」というキーワードが席巻していた10年前の2005年の12月、ちょっと興味があっていじってみたGoogleMapsAPIをいろいろ試しているうちにそれとなく出来上がったものがDamMapsの原型でした。で、これ公開したら有用なんじゃないのかなと日本ダム協会にデータ利用の許可をもらった上で公開までこぎつけたのが12月25日、ちょうど23日が金曜日で3連休だったんですね(当時のリリース記事
そこから、2年くらいぐわーって開発に取り組んでしばらく放置、GoogleMapsAPIの旧バージョンサポート終了に伴うあれこれで1から作り直して2013年に公開して今に今に至ります。10年続けたといってもほったらかしてる期間がわりと多いのでもっと働けよー!って言いたくはなります。
なにはともあれ10年という月日が経過してしまったわけですが、10年で変わったことも変わらないこともありました。
変わったことといえば、実行環境の変化でしょう。DamMapsの機能の大部分はWebブラウザ上で動くGoogleMapsJavascriptAPIを利用したJavascriptのプログラムとして書かれているのですが、この動作環境が10年前と今とでは天と地ほどの差がありました。
現在のDamMapsは地図を開いたらダムの位置が勝手にパラパラと表示されていきますが、当初は都道府県ごとに選択した地域のダムが表示されるようなものでした。これを、現在のような形にするのが最初の開発テーマだったんですけど、全国の2000以上のダムのアイコンを単純に地図に追加してしまうとJavascriptを動かすパフォーマンスが現在と比べると低いため、負荷がかかりすぎてまともに動かなくなってしまいます。なのでそこをうまいこと表示させるためにあれこれ試行錯誤していました。
その他に、PC以外のデバイスがいろいろ現れて、そういうものでも閲覧できるようにするためにはどうしたら良いだろうという開発テーマもずっとありました。実際にimodeやezwebみたいな携帯電話のweb環境向けのあれこれも試しに作ってみたりもしましたが、どうもうまい形にできなくて、今もスマホ対応のあれこれもやりたいなぁなんて思ってはいるのですが、それよりまずPC向けだ、ということで手付かずのままになっています。ちなみに、スマホ向けサイトはねっす〜さんがちかダムというサイトを公開されているので僕がやらなくても大丈夫だよね!っていう感じもありますが。
逆に10年を経てあまり変わらなかったもの、それはGoogleMapsがそれほど便利にならなかったことです。
DamMapsを作り始めた時、これってある特定の地点をただ表示させてるだけだからGoogleMapsが進化してすごく便利になったらわざわざDamMapsなんてつかわなくてもよくなるんじゃないかなーなんてことをずっと思ってました。DBに格納された地点の情報をもとに地図を表示して、各種データから検索することができるなんてGISのシステムとしてはごく基本的な機能でしょう。ネット上に公開できる汎用的な仕掛けが出来上がったらそこにのっけて済むならばわざわざJavascriptでごちゃごちゃシステム組まなくても済みます。ところが、10年を経た現在でもDamMapsの機能を代替できそうな汎用的なWeb上のサービスってどうもなさそうなんですね。正直、ここまでお払い箱にならずに使われ続けたというのは意外な感じでした。この先、果たしてどうなるかわかりませんが、まあ、代替手段ができるまではDamMaps続けなきゃダメかなぁなんてことは思ってます。
DamMapsが公開されてからの10年といえば、ダムの写真集やDVDが刊行され、ダムカードの配布が始まり、ダムの試験放流に大勢の人が集まり、ダムのそばでダムカレーが供されるようになった10年でした。そんなダム趣味のムーブメントをDamMapsは縁の下から支えることができたかな、なんて個人的にはちょっと思っています。さらに言えば、DamMapsが生まれるまでは日本全国にダムがどんな風に作られているのかというのを個人が手軽に得るための手段はなかったのではないかと思うんです。DamMapsによって初めて普通の人が日本のダムの姿を目の当たりにすることができたと言っても過言ではないのではないか、なんてちょっと威張ってみたり。でも、すくなくとも僕がそれを目にしたのはDamMapsが初めてでした。
そんなわけで、10歳の誕生日を迎えたDamMapsにちなんであれこれ書いてみましたが、これからもまだまだDamMapsには取り組んでいかなきゃだなぁって思ってますしやりたいことがまだまだあります。特に秋口から始めた「川と流域地図」なんかはDamMapsを超えて利用して頂けそうな感触がありますし、今回公開した選択・エクスポート機能と今後実装予定の絞り込み機能はGISとして基本的なものでしょうから、どうにか早めに実装したいと思ってます。地理情報技術を通してダムについての新たな視点みたいなものが誰もが手に届く形で提供できたら良いなぁ、なんてことを思っています。
あ、あと、ダムカードの情報、全然更新してないので早めにアップデートします。ごめんなさい。