DamMapsの10年

軽い気持ちで始めたものが10年経ってしまいました。
ネット上では「Web2.0」や「マッシュアップ」というキーワードが席巻していた10年前の2005年の12月、ちょっと興味があっていじってみたGoogleMapsAPIをいろいろ試しているうちにそれとなく出来上がったものがDamMapsの原型でした。で、これ公開したら有用なんじゃないのかなと日本ダム協会にデータ利用の許可をもらった上で公開までこぎつけたのが12月25日、ちょうど23日が金曜日で3連休だったんですね(当時のリリース記事
そこから、2年くらいぐわーって開発に取り組んでしばらく放置、GoogleMapsAPIの旧バージョンサポート終了に伴うあれこれで1から作り直して2013年に公開して今に今に至ります。10年続けたといってもほったらかしてる期間がわりと多いのでもっと働けよー!って言いたくはなります。
なにはともあれ10年という月日が経過してしまったわけですが、10年で変わったことも変わらないこともありました。
変わったことといえば、実行環境の変化でしょう。DamMapsの機能の大部分はWebブラウザ上で動くGoogleMapsJavascriptAPIを利用したJavascriptのプログラムとして書かれているのですが、この動作環境が10年前と今とでは天と地ほどの差がありました。
現在のDamMapsは地図を開いたらダムの位置が勝手にパラパラと表示されていきますが、当初は都道府県ごとに選択した地域のダムが表示されるようなものでした。これを、現在のような形にするのが最初の開発テーマだったんですけど、全国の2000以上のダムのアイコンを単純に地図に追加してしまうとJavascriptを動かすパフォーマンスが現在と比べると低いため、負荷がかかりすぎてまともに動かなくなってしまいます。なのでそこをうまいこと表示させるためにあれこれ試行錯誤していました。
その他に、PC以外のデバイスがいろいろ現れて、そういうものでも閲覧できるようにするためにはどうしたら良いだろうという開発テーマもずっとありました。実際にimodeやezwebみたいな携帯電話のweb環境向けのあれこれも試しに作ってみたりもしましたが、どうもうまい形にできなくて、今もスマホ対応のあれこれもやりたいなぁなんて思ってはいるのですが、それよりまずPC向けだ、ということで手付かずのままになっています。ちなみに、スマホ向けサイトはねっす〜さんがちかダムというサイトを公開されているので僕がやらなくても大丈夫だよね!っていう感じもありますが。
逆に10年を経てあまり変わらなかったもの、それはGoogleMapsがそれほど便利にならなかったことです。
DamMapsを作り始めた時、これってある特定の地点をただ表示させてるだけだからGoogleMapsが進化してすごく便利になったらわざわざDamMapsなんてつかわなくてもよくなるんじゃないかなーなんてことをずっと思ってました。DBに格納された地点の情報をもとに地図を表示して、各種データから検索することができるなんてGISのシステムとしてはごく基本的な機能でしょう。ネット上に公開できる汎用的な仕掛けが出来上がったらそこにのっけて済むならばわざわざJavascriptでごちゃごちゃシステム組まなくても済みます。ところが、10年を経た現在でもDamMapsの機能を代替できそうな汎用的なWeb上のサービスってどうもなさそうなんですね。正直、ここまでお払い箱にならずに使われ続けたというのは意外な感じでした。この先、果たしてどうなるかわかりませんが、まあ、代替手段ができるまではDamMaps続けなきゃダメかなぁなんてことは思ってます。
DamMapsが公開されてからの10年といえば、ダムの写真集やDVDが刊行され、ダムカードの配布が始まり、ダムの試験放流に大勢の人が集まり、ダムのそばでダムカレーが供されるようになった10年でした。そんなダム趣味のムーブメントをDamMapsは縁の下から支えることができたかな、なんて個人的にはちょっと思っています。さらに言えば、DamMapsが生まれるまでは日本全国にダムがどんな風に作られているのかというのを個人が手軽に得るための手段はなかったのではないかと思うんです。DamMapsによって初めて普通の人が日本のダムの姿を目の当たりにすることができたと言っても過言ではないのではないか、なんてちょっと威張ってみたり。でも、すくなくとも僕がそれを目にしたのはDamMapsが初めてでした。
そんなわけで、10歳の誕生日を迎えたDamMapsにちなんであれこれ書いてみましたが、これからもまだまだDamMapsには取り組んでいかなきゃだなぁって思ってますしやりたいことがまだまだあります。特に秋口から始めた「川と流域地図」なんかはDamMapsを超えて利用して頂けそうな感触がありますし、今回公開した選択・エクスポート機能と今後実装予定の絞り込み機能はGISとして基本的なものでしょうから、どうにか早めに実装したいと思ってます。地理情報技術を通してダムについての新たな視点みたいなものが誰もが手に届く形で提供できたら良いなぁ、なんてことを思っています。
あ、あと、ダムカードの情報、全然更新してないので早めにアップデートします。ごめんなさい。

DamMapsに新機能追加しました(選択ダムkml出力機能)

DamMaps version1.3.2
http://dammaps.jp/

2015年12月25日でDamMapsはついに10周年!
ということで、かなり中途半端な状態ではありますが、今回記念リリースさせていただきます。
今回リリース機能は

  • ダム選択機能
  • 選択ダムkml出力機能

です。
どんなものかというと、まずダムの選択機能が付きました。

ダムアイコンをクリックして開いた情報ウィンドウにある選択ボタンをクリックするか、ダムアイコンをダブルクリックすると

アイコンの色が黄色になり、選択状態になります。解除したい場合は同じ操作をもう一度してみてください。

ダムを選択後サイドバーにある「KML(選択したダム)」リンクが有効になり、クリックすると選択されたダムの情報のkmlファイルをダウンロードできます(最大30基まで)。
GoogleEarthやiPhoneアプリのFieldAccess2などkmlファイルに対応した各種アプリケーションで取り込んで使用したり

Googleマップのマイマップのインポート機能を使用すれば、マイマップ上にダムの位置を表示させることができます。マイマップを利用したダムめぐり計画にぜひご利用ください。
今回リリース分に関しては今日に間に合わせるためにとりあえず作ったという感じなので、もろもろ今後きちんと仕上げていきますので、ご期待のほど。
というわけで、10歳になったDamMaps、これからもご利用されている皆様のダムに関わる色んな活動を支えていけたら良いなーと思ってます。
どうぞこれからもよろしくお願いします!

冬コミの新刊は「太陽光発電所」の本 #C89

また直前の告知で申し訳ありませんが、冬コミサークル出展します。

コミックマーケット89 30日(2日目)西り44b
https://webcatalog.circle.ms/Circle/12316975

今回の新刊はこちらの太陽光発電所の本です。

 東日本大震災からのエネルギー問題をきっかけに全国各地にたくさんの太陽光発電所が作られました。
 僕の中で太陽光発電所といえば「未来のエネルギー」として博物館みたいなところでうやうやしく展示されるようなイメージの代物だったのですが、いつの間にやら「誰が作ったか知らないけど気付いてみたらひょっこり近所に出来上がっているもの」になっていて、なんだかすっかり誰の気にも止められない、世の中に馴染みきった存在になっています(あるいは変化が急激すぎていろいろ追いつかなくなった結果、社会問題と化しているような事もあるようですが)。
 そんな光景を眺めてると、ふと太陽光発電所が「ドラえもん」や「オバケのQ太郎」みたいなものの姿に重なって見えてきました。現代社会の基準では明らかに異質と言えるものが、白日の下その辺をうろうろしてるのにさして気にも止められず、あくまでそのご近所の日常のなかに収まって存在し得る世界。
 この本ではそんな「ソラパネさん」のいる「ご近所の風景」を集めてみました。
 家の向かいに、畑の隅に。2015年の今、日本のどこかに確かにある風景の記録です。
(本文より)

「4軒となりのソラパネさん〜太陽光発電所のあるご近所の風景」
A5フルカラー28ページ

ここ数年で雨後の筍のごとく生まれた太陽光発電所について実際にあちこち見て回って写真に撮ってまとめてみた写真集っぽい本です。これまで何冊か同人誌作ってきましたが、写真メインの本はこれが初めてでかなりドキドキです(在庫抱え込んでしまうのではないか的な意味で)。
このほかに、既刊のダムマンガ聖地巡礼本とダム紙幣本、あと砂防の本を持っていきますので、どうぞよろしくお願いしますー!
あ、あと、新刊はないですが、既刊の本を今週末のダムアワードの物販コーナーで売らせていただきますのでこちらも合わせてよろしくお願いしますー!

DamMapsに新機能追加しました(オーバーレイ地図のUI分離・「川と流域地図」の表示対応他)

DamMaps version1.3.1
http://dammaps.jp/

今回の修正は

  • オーバーレイ地図の表示コントロールの分離(1.3.0:10/24リリース)
  • 「DamMaps:川と流域地図」の表示(1.3.0)
  • オーバーレイ地図のリンクパラメータ対応(1.3.1)

です。
8月末から作り始めてた「川と流域地図」の対応どうにか出来ました。もうちょっと地図タイルが出来てからにしようかなと思ってたのですが、一旦形になるとどんな感じになってるのか一度合わせておきたいという気持ちとあとDamMaps側のUIの変更をさっさと済ませたいあたりでやってしまいました。なので、今後の地図タイルのブラッシュアップに合わせてDamMaps側ももうちょっと変わる予定です。
いや、でも、合わせてみるといいですね。川と流域地図に合わせることで今まで見えにくかったものが見えてきそうな気がします。たとえば、Twitterで紹介したのですがこんなの。


これからもより一層活用されていくと良いなーって思ってます。あと、DamMaps実は今年の12月25日でちょうど10周年でして、そこに向けていろいろ新しい機能開発していこうかなーっていう感んじになったりしてますので、どうぞご期待の程よろしくお願いします!

「川と流域地図タイル」のレシピ その1

前にブログに書いた軽い気持ちで始めた「川と流域地図」、現在も絶賛開発中なのですが、どんなことをやっているのか、この1ヶ月ほどで泥縄で身につけた現時点でのあれこれをちょっとまとめてみようと思います。

そもそも何を作っているの?

「地図タイル」とか「マップタイル」と呼ばれるいろんな縮尺で作成した小さな画像ファイルに分割された大量の地図画像を作成しています。
具体的にはこんなの。

こういう、地図を小さく分割した画像ファイルを決まったディレクトリ・ファイル構成に従って作成すると、GoogleMapsのようなスムーズに操作が可能なWeb地図として公開できたり、あるいはカシミール3Dみたいなツールから参照できたりと、利用者が活用しやすい形でネット上に地図を公開することができるわけです。

どうやって作るの?

現在公開しているバージョンの川と流域地図は200万枚以上の画像ファイルで構成されていてこれを人の手で1枚1枚作るというのはあまりにも非現実的、そもそも地図画像自体どうやって作るのか作り始めるまでは想像もできませんでした。ところが、現在、地理情報関係のオープンソースソフトウェア(FOSS4Gと呼ばれてます)がかなり充実してきていまして、それらをうまく使ってみると意外と簡単に地図タイルを作り出すことができちゃったりするんですね。
何はともあれどんなものを使ってどういう風に作っているのか、ちょっと図にまとめてみました。

地図タイルの制作工程の中で核となるツールが図中下段にある「QGIS」と「TileMill」です。

QGISプロジェクトへようこそ!
http://qgis.org/ja/site/

QGISオープンソースマルチプラットフォームGISソフトウェアで、具体的にはShapeファイルという形式で提供される「国土交通省・国土数値情報ダウンロードサービス」の流域と河川のデータについて編集や演算、参照するために使用しています。このQGISですが日本語化もきちんと対応されていて、また、解説書関係も結構充実しているので、わりととっつきやすい状況になっていると思います。地図タイル抜きにしても一度触れてみるとこんなものがあったんだ…!って結構びっくりすると思いますよ。

QGIS入門 第2版

QGIS入門 第2版

そしてこのShapeファイルから地図タイル画像を生成するのがTileMillです。

TileMill | Mapbox
https://www.mapbox.com/tilemill/

CartoCSSと呼ばれるweb開発でおなじみのあのCSSみたいな言語で「川の色は青色で、水系の境界線は黒の太線、流域面積が小さい川はzoomレベルが10以上の場合だけ表示…」みたいな地図のスタイルを記述していくと、Shapeファイルなどの地理データから画像を生成することができます。ただ、QGISではマウスでぽちぽちクリックすればそういう指定ができちゃうんですけど、TileMillの場合テキストエディタが提供されるだけで1行1行CartoCSSの書式を記述する必要があります。まあ、でも、それほど難しい感じではなくて

LearnOSM
http://learnosm.org/ja/map-design/tilemill/

の解説読んでサンプルの地図のコードをあれこれいじってみたりしているうちに結構簡単に理解できるんじゃないかなと思います(できました)。
ちなみにCartoCSSの条件指定はQGISのそれに比べるとかなり非力で、そういう書式を実現させたい場合あらかじめQGISなどで条件に合うかどうかのフラグ項目を作成したりするなどの下準備をしてTileMillで処理できるshapeファイルを用意する必要があります。QGISとTileMillの二つのツールを行ったり来たりしてるうちに地図ができあがっていく感じでした。
さて、TileMillで生成されるファイルはmbTilesという形式のファイルで、一般のWebサーバで公開するにはここからpngjpegファイルを取り出してあげる必要があります。その変換を行うのがmb-utilというユーティリティ、Pythonが動く環境が必要です。

GitHub - mapbox/mbutil: Importer and Exporter of MBTiles
https://github.com/mapbox/mbutil

このユーティリティを使うときちんとルールに従ったディレクトリ構成の大量の画像ファイルが生成されるので、そのままWebサーバで公開すれば良いのですが、なにぶんファイルが大量にあってそこらへんを考慮したWebサーバのチューニングしないといけないんでしょうけど、まだそこまで手が回ってません。
さて、基本的にはこれらのツールを使いこなせば個人でも地図タイルをわりと簡単に作成することできる感じなのですが、今回の川と流域地図の場合、国土数値情報の提供する「流域メッシュ」データの品質に問題があっていろいろ手を入れないと欲しいデータが得られない感じでした。そのためにデータを直接プログラムで操作する必要が生じたのですが、そこで登場するのがgeoJSONです。

GeoJSON フォーマット仕様
http://s.kitazaki.name/docs/geojson-spec-ja.html

geoJSONはshapeファイルなどと同じ地理情報を取り扱うためのファイルフォーマットなのですが、shapeファイルと大きく違うのはその名の通りJSONフォーマットのテキスト形式なファイルなんです。つまり、最近の各種プログラム言語なら大体サポートしてるであろうJSONファイルのライブラリを使用してデータの処理ができるんですね。さらに、QGISはgeoJSONに対応しているので、読み込ませたり逆に出力したりすることができるわけです。この使い慣れたプログラム言語使ってデータを直接編集できるというのは制作環境として非常に強力でした。
というわけで、地図タイル制作のざっくりとした話を書いてみました。地図タイル自体はまだまだ開発中でして、僕も1ヶ月ほど前にゼロから始めたものなのでいろいろあれな点もきっとあるんだろうなーとは思いますが、一応最初から最後まで出来たことのマイルストーンみたいな感じでまずまとめてみました。次回は「流域メッシュ」に手を入れたあれこれの話を書こうと思います。

ニコ動でドラマ「半沢直樹」のサントラが使用できるようになって倍返しだ!

niconicoのサービスはJASRAC包括契約を結んでるので、JASRAC契約曲を自分で演奏したり歌ったりするのは問題ないのですが、市販のCDの音源の利用にはさらに原盤権というものが絡んできて動画中で流したりすると権利を侵害する恐れがあります。
ですが、そのへんの権利関係をドワンゴがクリアにしてくれて、使用しても問題が無いCD楽曲というものが存在します、という話を度々ブログで取り上げてきたのですが(ニコ動・ニコ生で使えるサントラを調べてみた - 「まずまずのダム日和」ニコ動で「やる気のないダースベイダー」と「マツケンサンバ」が使えます - 「まずまずのダム日和」)また、いろいろ動きがあったのでご紹介。
今年の8月1日、「株式会社日音」という権利者の楽曲が大量に登録され、さらに9月10月と楽曲がさらに追加されました。

8月1日登録分(2289曲)
9月1日登録分(263曲)
10月1日登録分(191曲)

で、今回登録された楽曲の傾向がかなり偏ってて、まず目を引き大部分を占めるのがドラマのサントラです。タイトルにあげた大ヒットドラマ「半沢直樹」を含む、TBSで放映されたドラマのサントラが大量に登録されていて、MMDなどの物語作品中、倍にして返したいシーンなどで有効に活用できそうな感じになっています。

日曜劇場 半沢直樹 オリジナル・サウンドトラック

日曜劇場 半沢直樹 オリジナル・サウンドトラック

さらに、今回変わったところでは、「おばけのQ太郎」を始めとする60年代アニメ主題歌がいくつか登録されていました。

http://license-search.nicovideo.jp/song?action=find&type=product&query=%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E7%95%AA%E7%B5%84%E4%B8%BB%E9%A1%8C%E6%AD%8C

これで、「オバQ音頭を踊ってみた」なども権利がクリアな状態で公開できますね。盆踊りの時期終わっちゃったけど。
というわけで、ニコ動のこの取り組み、地味であまり大きく取り上げられることもないのですが、きちんと少しづつ使える楽曲が増えていっているのは本当に素晴らしいことで、ぜひこれからも続けていってほしいなぁ、と思います。あ、でも追加したらプレスリリースくらい出しても良いと思うけどなー。あと、検索機能がやっぱり貧弱すぎるというか。